海外生活で便利な魔法の言葉

魔法の言葉とは?

小さい子供がありがとうと言い忘れたとき、ドイツの親や幼稚園の先生は、”魔法の言葉、忘れてるよー” と言ってしつけるのをよく耳にします。使うといろいろいいことがある魔法の言葉、だからどんどん使いましょう、という感じでドイツの大人は子供にありがとうと言う習慣をつけさせようとしているみたい。一粒で2度も3度もおいしい魔法の言葉、実は外国語会話学習の中でもたくさんあって、その中のいくつかを私自身の経験から拾ってみました。

魔法の言葉:子供編

ドイツで生活を始めてしばらくたったころ、南米から来た7歳の子を2週間ホームステイさせてあげたことがあったのですが。我が家の近所は同じ年ごろの子供たちがたくさんいて、みんな昼間は家の前の道路で仲良く遊ぶから、その子もその輪に入ろうとするのですが、ドイツ語ができないからなかなか上手に一緒に遊べない。毎日、5分もするとすぐに近所の子たちと喧嘩になってしまって私のところに泣きついてくるという始末・・・・。

どうして喧嘩になるんだろう・・・と子供たちを観察してみたところ、ある魔法の言葉を思いついたのでその子に教えてみました。 ”ich bin dran” (私の番だよ)と言ってごらん、と。するとたちまちドイツの子供たちは外国の子を受け入れ、仲良く遊びだしました!南米の子は、言葉を使わずに黙ってよその子の自転車に乗ったりスケボーを使ったりしていたから喧嘩になっていたわけで、”私の番よ” という一言を添えるだけでドイツの子供たちはいきなり寛容になったんですね。この魔法の言葉を皮切りに、南米の子は近所の子たちとの遊びを通してどんどん自動的にドイツ語を覚え始めました。

魔法の言葉:大人編

私がドイツに来て間もないころ、やはりドイツ語の会話がなかなか思うようにいかず、自分自身にとてもイライラしていました。自分の語学力が足らないために人との会話が続かなくて自己嫌悪の連続。うーん、どこかに語学力が一気に伸びる魔法の言葉はないものか・・・と、周囲のドイツ人をよく観察してみたところ、あるある。例えば、echtという言葉。本当の、という意味で(英語だとreally)、これを関西弁の ”ホンマかいな?” ”ホンマやね” ”ホンマちゃう?” ”ホンマにそうやわ・・” という感じでその場その場に合ったトーンで会話の途中に相槌として使ってみたら、会話が続いたんです!相手の言ったことがあんまりよく聞き取れなかったときでも、会話の合間に echt?と入れると、相手は ”そうなのよー、もう一度言うけどxxxなんて信じられないでしょー” のごとく、私の聞き取れなかったxxxの部分を繰り返してくれたりするのでとても便利。そうやって会話が続いているうちに、先ほど聞き取れなかったことの内容も分かってきたりなんかして、最後にはドイツ人から、”短期間でドイツ語うまくなったね” と褒められて。自分は ”echt!” を連発していただけなんですがね。

魔法の言葉:日本語編

日本語にだって魔法の言葉はたくさんあって、関西弁で例えると、”そやね” ”そやの?” ”そやけど” ”そやかて” ”そやろか” と、”そや” という一語に語尾をちょこっと変化させるだけで “I agree with you”, “Is it true?”, “Yes, but…”, “I have another opinion” というさまざまな意味に使えて超便利。(関西弁は便利なもので、”そやね” だけでなく ”ええね” も一粒で10回くらいおいしい言葉ですね。)魔法の言葉は、周囲の人の会話をじーっと観察していると古今東西どこにでもあるのですね。

魔法の言葉の裏側

つまるところ、魔法の言葉というのは、その国の人が無意識のうちに非常によく使っている言葉やみんながいつも言っているセリフというだけのもの。タダで拾えて、誰も普段意識していなくて、どの教科書にも載っていない言葉。例えて言うなら野菜の皮みたいなもので、誰もその価値を意識しないけれど実はビタミンたっぷり。語学学校では教材にもテーマにもならないのですが、それじゃああまりにもったいない言葉たち(野菜の皮も料理学校では捨てるばかり)。タダで栄養たっぷりの便利なものがあるのなら、使わない手はないんです。それらを拾うのはあなたの耳、耳をダンボにして周囲の会話の中の魔法の言葉をしっかり拾ってみませんか。魔法の言葉によって外国語での会話にエンジンがかかったら、自然と加速度は増していきます、そして短期間でアウトバーンも朝めし前!

 

ABOUTこの記事をかいた人

大阪府出身。高校でテキサスの公立高校に1年留学、大学でカリフォルニア州UCSDに1年留学、西ドイツ銀行東京支店勤務後ロンドンビジネススクールでMBA。その後ブラウン社のドイツ本社で勤務、フランクフルト証券取引所に転職。現在フリーランスで国際コミュニケーション指導や通訳をする2児の母、フランクフルト在住。尊敬するのはイソップ寓話”アリとキリギリス”のキリギリス。子供が大きくなってきたので最近キリギリス業再開しました。