ドイツで留学や就活・転職をする場合、推薦状がモノを言う。大学の入学願書にも推薦状、就活のためのカバーレターと履歴書にも推薦状、というのがドイツ流。会社を辞める時も推薦状をもらってから辞めるのが普通で、その推薦状を次の会社への応募に利用する。第3者が推薦してくれたということが評価基準となるのだ。
■ 推薦状のポイント
・推薦状を書いてもらうのは社会的地位を確保している人がよい(管理職上司・先生・教授など)
・推薦状には自分の人となりがはっきり分かるように書いてもらう。特に長所・特技にポイントを置く。
・推薦状は自分で書いて、それをたたき台にして推薦者に仕上げてもらうという形が望ましい。
誰に推薦状を書いてもらうか。
もちろん自分を推薦してくれる人の知名度が高いほど、推薦状を読む人が注目してくれる。さらに推薦者と自分のつきあいが長ければそれだけ推薦状の信頼度が増す(普通推薦状には推薦者が被推薦者とどれだけの期間どういう関わりがあったのかを明記するので)。この場合の知名度とは、読む人にとっての知名度なので、日本でめちゃくちゃ有名な人でもドイツで知られていなければ日本の無名な人の推薦状と何ら変わらない。留学の場合なら自分のゼミの教授に書いてもらったり(勉学への取り組みの証拠となる)、バイト先の店長に書いてもらう(働きぶりについての証拠となる)など。転職の場合は、管理職上司に退職時に推薦状をもらうのが一般的。推薦状は必ずしも留学先の学科や次の職種と関係ある必要はなく、習い事の先生やスポーツのコーチに推薦状を書いてもらったりもできる。
推薦状には何を書くか。
履歴書が主観的な書類であるのに対し、推薦状は客観的な書類。第3者が見た私というのがはっきりする内容であることがいい。つまり、推薦者とどんなことでどれだけのつきあいであったかということと、その中で自分がどういう位置にあったか、どういう態度であったか、どういう価値をもたらしたのか、といったことが推薦状の主な内容になる。推薦状の果たすべき目的は、自分が価値ある人間だというのを客観的にアピールすることであるから、内容は自分の長所・特技に絞ってもらう。
推薦状の実態
さりとて、自分のことを一番よく知っているのは自分で、いきなり推薦状をお願いしますと言われてもなかなか時間の取れない上司や教授も多い(知名度の高い人であればあるほど時間がないというジレンマに陥る)。なので、推薦状の下書きをまず自分自身で作り、それをたたき台にして校正・修正してもらうというパターンも多い。そうすることによって、自分の将来に生かせる推薦状が出来上がるし、推薦者が快くサインしてくれるよう自分自身を客観視するといういいチャンスにもなる。
推薦状の効能
ドイツの現地校での成績がちょっと足りなくても土曜日に通っている日本人補習校校長の推薦状を付けたらみごと志望の中高や大学に合格した、というケースは何度か聞いたことがあるし(推薦状が直接その功をなしたかどうかは実証できないけれども)、私自身の転職経験では、推薦状が何通添付されていてそれが誰の書いたものかをよくよく眺めていた面接官もいたし、推薦状の果たす役割は大きい。知人の息子は大学で生物専攻するにあたって、名の通ったピアノの先生に詳しい推薦状を書いてもらっていた(その大学には合格した)。推薦状が単独で成功を呼ぶわけではないけれど、ドイツ人ならみんなこれもこれもと添付する推薦状がないと物足りない感がつきまとってしまうのも事実である。